The jazz guitar master – Yoshiaki Miyanoue

2016/02/28

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日本を代表するジャズギタリスト、宮之上貴昭さん(右)と。
with Yoshiaki Miyanoue (right), a leading jazz guitarist in Japan – English article available soon.

自分にとって大きな存在。
ジャズ史に輝くジャイアントです。

ビバップを中心とした歌心のある演奏を、ユーモアも交えつつ圧倒的な技術で聴かせます。

具体的な特徴としては、フィンガーピッキング〔指弾き〕が挙がりやすいかと。一般的にはピックを使うか、または指弾きと混ぜて弾くことが多いのに対して、宮之上さんの場合は全て指弾きです。これによって得られるのは、柔らかい指に弦が弾かれることによる、丸みのあるウォームなトーン。、

逆に犠牲になるのはスピード。どうしてもピックでの速さには追いつくのは大変。また、リズムを安定させるのも難しいです。しかし、宮之上さんのリズムは完璧。多大な練習量により、これらを克服されたと思われます。

このスタイルは往年の名プレイヤー、ウェス・モンゴメリからの継承。「オクターブ奏法」もウェスからの流れですが、宮之上さんも半端ない上手さです。比べようもありませんが、ウェスよりも上手いのではないか?と思わせるほど、ライブ演奏は圧倒的です。宮之上さんはさらに発展させて多くの奏法にも結び付けています。

また注目に値するのは、このスタイルを何10年間維持してきたことです。

ミュージシャンとして実力が認められれば、ジャズ以外の音楽でも仕事の話が来るのではないかと思います。そこを歌謡曲は J-POP はもちろん、フュージョンなどにも行かず、「どジャズ」であるビバップ一本で通してきたこと。(もちろん、どの音楽がいいとか悪いという話ではないです。)

ピッキングも上述のフィンガーだけに絞ったこと。たまに遊びでピックを持たれることはありますが、基本的には使われません。

この一途さ、頑固さ。これが他にはない「宮之上貴昭」の音楽アイデンティティを作ったのだと思います。

例えるなら、寿司屋。寿司屋に行って、「今日は美味しいカレーがありますよ」とはあまり言われないですよね(これはあくまでも例で、ちなみに私はカレーも好きなんですが)。でも寿司を食べたいなと思ったら、いつも店を開けてそこに居てくれて、最高の寿司を握ってくれる。そういう意味でファンを裏切らない。実際に、宮之上さんの極上 SUSHI 演奏を何度も見て、何度も感心感動し、大きな刺激をもらっています。

自分も演奏者としてライブをしたりしますが、どんな寿司屋になればいいのか。何をもって「Oggyの演奏」と位置付ければいいのだろう、そしてスケールアウトの方向性は?と、宮之上さんの演奏を見た後で帰りの電車で悶々としたりしました。(ちなみにマイルス・デイヴィスのように、変化の仕方が凄まじかった人もいますけどね。)

さらに宮之上さんは自身のギターを極めるだけでなく、ジャズギターの裾野を広げ、コミュニティ運営をしている点も素晴らしいです。「ジャズギター道場」も開き、初心者からプロまで、誰にでも門戸を開いて後進の育成にも長年取り組まれています。輸入文化としてのジャズ演奏を、YouTube などもなくまだ十分に教材がない時代に高いレベルで吸収し、これだけの人に日本で伝えるというのは大きな功績ですね。結果として、多くのジャズギタリストが巣立っていきました。

現在70人(?)もの門下生がいて、師範代の先生チームがいて切磋琢磨。年に1度のジャズギター合宿で集合。私も頻繁ではなかったかもしれませんが、何度か参加させて頂いております。自分にもとても気さくに話してくれて、ユーモアや茶目っ気たっぷりです。こういう、人間的な魅力にも溢れた人なので多くの人がついてくるのでしょう。

そんな宮之上さんですが、この2月末をもって突然の活動休止宣言。腱鞘炎治療のため、半年間の休養をとるとのこと。がーーーん。あの寿司屋の頑固親父が、しばらく握ってくれないことになったのです。

うーん、あの激しい演奏ですから長年手の酷使になったでしょうね。。このため、この3年間、西荻窪の Coco Palm で毎週行われていたジャムセッションも終了することになりました。ジャムセッションとは、よく知られたスタンダード曲を中心に参加ミュージシャンがその場で演奏し、即興的に共演するというものです。宮之上さんや相方の中川卓也さんがセッションホストを務める貴重な場だったのですが、先日 2/23 (火) に最終回を迎えました。

というわけで長くなりましたが、この写真はそのジャムセッションでの一枚 (2/9)。

最終回の2週間前のこの日、自分は宮之上さんの曲である「Sunset Street」を用意。楽譜を持っていないのですが、音源からメロディやコード進行をなぞって準備してみました。当日、コード進行をその時のメンバーに渡して演奏スタート。が、その準備もむなしく、私の演奏はボロボロ・・・。ミスりまくり!

それを見かねた宮之上さん、1番のメロディが終わったところでステージ上に登場。会場は大盛り上がり&爆笑の渦に。しかし、やってしもうた私の間横で、本物の演奏を聴かせてくれました。私は横で恐縮バッキング。その時にパシャっと Yasuyo さんが撮ってくれたのでした。

その時は訳が分からず無我夢中だったのですが、後々考えてみると貴重な瞬間だったのだなあ。ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。

腱鞘炎が治まる10月頃に復帰予定とのことなので、私がもう少しまともに弾けるようになったら、また一緒にやってくださいね、宮之上さん。